労働災害について事業主に損害賠償を求めることができるのは、使用者に安全配慮義務の違反があると言える場合です。
「安全配慮義務」とはどのような内容の義務なのでしょうか。
ある裁判例では、この安全配慮義務を、「労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは器具等を使用し又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務」と説明しています(川義事件・最高裁昭和59年4月10日判決)。
☎048-862-0355
労働災害について事業主に損害賠償を求めることができるのは、使用者に安全配慮義務の違反があると言える場合です。
「安全配慮義務」とはどのような内容の義務なのでしょうか。
ある裁判例では、この安全配慮義務を、「労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは器具等を使用し又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務」と説明しています(川義事件・最高裁昭和59年4月10日判決)。
労災保険の請求をした結果、労働基準監督署から保険給付をしないという「不支給決定」を受けてしまったとか、支給決定は出たけれども、考えていたよりも低い障害等級の評価になってしまった場合などには、各都道府県労働局の労災保険審査官に対し、「審査請求」という不服申し立てをすることができます。
労災保険審査官の決定にも不服があれば、さらに、労働保険審査会に「再審査請求」をすることができます。
再審査請求について労働保険審査会がした「裁決」に対しても不服があるという場合、あるいは、労働保険審査会に再審査請求をして3ヶ月が経過しても「裁決」が出ないという場合については、今度は、裁判所に行政訴訟を提起することができます。
審査請求や行政訴訟の手続を本人で進めていくことももちろん可能ですが、原処分の事実の捉え方や評価についての誤りを的確に批判するという作業は簡単なことではありません。弁護士の相談を受けてみることをお勧めします。
労災と認められれば、次のような保険給付を受けることができます。
他にも、葬祭費の補償、傷病補償年金などがあります。
等級 | ||
第1級 | 1 | 両眼が失明したもの |
2 | 咀嚼及び言語の機能を廃したもの | |
3 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの | |
4 | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの | |
5 | 削除 | |
6 | 両上肢をひじ関節以上で失ったもの | |
7 | 両上肢の用を全廃したもの | |
8 | 両下肢をひざ関節以上で失ったもの | |
9 | 両下肢の用を全廃したもの | |
第2級 | 1 | 1眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの |
2 | 両眼の視力が0.02以下になったもの | |
2の2 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの | |
2の3 | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの | |
3 | 両上肢を手関節以上で失ったもの | |
4 | 両下肢を足関節以上で失ったもの | |
第3級 | 1 | 1眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの |
2 | 咀嚼又は言語の機能を廃したもの | |
3 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服する事ができないもの | |
4 | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの | |
5 | 両手の手指の全部を失ったもの | |
第4級 | 1 | 両眼の視力が0.06以下になったもの |
2 | 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの | |
3 | 両耳の聴力を全く失ったもの | |
4 | 1上肢をひじ関節以上で失ったもの | |
5 | 1下肢をひざ関節以上で失ったもの | |
6 | 両手の手指の全部の用を廃したもの | |
7 | 両足をリスフラン関節以上で失ったもの | |
第5級 | 1 | 1眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの |
1の2 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの | |
1の3 | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの | |
2 | 1上肢を手関節以上で失ったもの | |
3 | 1下肢を足関節以上で失ったもの | |
4 | 1上肢の用を全廃したもの | |
5 | 1下肢の用を全廃したもの | |
6 | 両足の足指の全部を失ったもの | |
第6級 | 1 | 両眼の視力が0.1以下になったもの |
2 | 咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの | |
3 | 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの | |
3の2 | 1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの | |
4 | 脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの | |
5 | 1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの | |
6 | 1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの | |
7 | 1手の5の手指又はおや指を含み4の手指を失ったもの | |
第7級 | 1 | 1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの |
2 | 両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの | |
2の2 | 1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの | |
3 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの | |
4 | 削除 | |
5 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの | |
6 | 1手のおや指を含み3の手指を失ったもの又はおや指以外の4の手指を失ったもの | |
7 | 1手の5の手指又はおや指を含み4の手指の用を廃したもの | |
8 | 1足をリスフラン関節以上で失ったもの | |
9 | 1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの | |
10 | 1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの | |
11 | 両足の足指の全部を廃したもの | |
12 | 外貌に著しい醜状を残すもの | |
13 | 両側の睾丸を失ったもの | |
第8級 | 1 | 1眼が失明し、又は1眼の視力が0.02以下になったもの |
2 | 脊柱に運動障害を残すもの | |
3 | 1手のおや指を含み2の手指を失ったもの又はおや指以外の3の手指を失ったもの | |
4 | 1手のおや指を含み3の手指の用を廃したもの又はおや指以外の4の手指の用を廃したもの | |
5 | 1下肢を5センチメートル以上短縮したもの | |
6 | 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの | |
7 | 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの | |
8 | 1上肢に偽関節を残すもの | |
9 | 1下肢に偽関節を残すもの | |
10 | 1足の足指の全部を失ったもの | |
第9級 | 1 | 両眼の視力が0.6以下になったもの |
2 | 1眼の視力が0.06以下になったもの | |
3 | 両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの | |
4 | 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの | |
5 | 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの | |
6 | 咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの | |
6の2 | 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの | |
6の3 | 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの | |
7 | 1耳の聴力を全く失ったもの | |
7の2 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの | |
7の3 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの | |
8 | 1手のおや指又はおや指以外の2の手指を失ったもの | |
9 | 1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの | |
10 | 1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの | |
11 | 1足の足指の全部の用を廃したもの | |
11の2 | 外貌に相当程度の醜状を残すもの | |
12 | 生殖器に著しい障害を残すもの | |
第10級 | 1 | 1眼の視力が0.1以下になったもの |
1の2 | 正面を見た場合に複視の症状を残すもの | |
2 | 咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの | |
3 | 14歯以上に対し歯科補綴を加えたもの | |
3の2 | 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの | |
4 | 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解するこができない程度になったもの | |
5 | 削除 | |
6 | 1手のおや指又はおや指以外の2の手指の用を廃したもの | |
7 | 1下肢を3センチメートル以上短縮したもの | |
8 | 1足の第1の足指又は他の4の足指を失ったもの | |
9 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの | |
10 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの | |
第11級 | 1 | 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの |
2 | 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの | |
3 | 1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの | |
3の2 | 10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの | |
3の3 | 両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの | |
4 | 1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの | |
5 | 脊柱に変形を残すもの | |
6 | 1手の人差し指、中指又は薬指を失ったもの | |
7 | 削除 | |
8 | 1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの | |
9 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの | |
第12級 | 1 | 1眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの |
2 | 1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの | |
3 | 7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの | |
4 | 1耳の耳殻の大部分を欠損したもの | |
5 | 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの | |
6 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの | |
7 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの | |
8 | 長管骨に変形を残すもの | |
8の2 | 1手の小指を失ったもの | |
9 | 1手の人差し指、中指又は薬指の用を廃したもの | |
10 | 1足の第2の足指を失ったもの、第2の足指を含み2の足指を失ったもの又は第3の足指以下の3の足指を失ったもの | |
11 | 1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの | |
12 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | |
13 | 削除 | |
14 | 外貌に醜状を残すもの | |
第13級 | 1 | 1眼の視力が0.6以下になったもの |
2 | 1眼に半盲目、視野狭窄又は視野変状を残すもの | |
2の2 | 正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの | |
3 | 両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの | |
3の2 | 5歯以上に対し歯科補綴を加えたもの | |
3の3 | 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの | |
4 | 1手の小指の用を廃したもの | |
5 | 1手のおや指の指骨の一部を失ったもの | |
6 | 削除 | |
7 | 削除 | |
8 | 1下肢を1センチメートル以上短縮したもの | |
9 | 1足の第3の足指以下の1又は2の足指を失ったもの | |
10 | 1足の第2の足指の用を廃したもの、第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの | |
第14級 | 1 | 1眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの |
2 | 3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの | |
2の2 | 1耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの | |
3 | 上肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの | |
4 | 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの | |
5 | 削除 | |
6 | 1手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの | |
7 | 1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの | |
8 | 1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの | |
9 | 局部に神経症状を残すもの | |
10 | 削除 |
後遺障害等級 | 後遺症慰謝料の金額 | 労働能力喪失率 |
第1級 | 2800万円 | 100% |
第2級 | 2370万円 | 100% |
第3級 | 1990万円 | 100% |
第4級 | 1670万円 | 92% |
第5級 | 1400万円 | 79% |
第6級 | 1180万円 | 67% |
第7級 | 1000万円 | 56% |
第8級 | 830万円 | 45% |
第9級 | 690万円 | 35% |
第10級 | 550万円 | 27% |
第11級 | 420万円 | 20% |
第12級 | 290万円 | 14% |
第13級 | 180万円 | 9% |
第14級 | 110万円 | 5% |
労災保険の給付が行われるのは、「業務上災害」、「通勤災害」に該当する場合に限られます。どのような要件を満たせば、「業務上災害」、「通勤災害」として労災保険の支払いを受けられるのでしょうか。
労災保険における「業務上災害」とは、労働者が事業主の支配下にあることに伴う危険が現実化したものと経験法則上認められる場合をいいます。
労働者が労働契約に基づいて使用者の支配下にある時の被災であることを「業務遂行性」、使用者の支配下にあることに伴う危険が現実化したと経験法則上認められることを「業務起因性」といい、この2つの基準によって業務上災害と言えるかどうかが判断されます。
例えば、休憩時間中は業務から離れてはいますが、休憩時間を事業所内で過ごしているような場合には、使用者の支配下にあると言えるので、業務遂行性は肯定されます。
したがって、あとは事業所施設の欠陥によって事故が発生した場合のように勤務時間中であっても同様の事故が発生する可能性があったと言えさえすれば、業務上災害と認められることになります。
逆に、勤務時間中の事故(したがって、「業務遂行性」は肯定される。)であっても、例えば、同僚と私的なもめごとから喧嘩になってケガをしたというような場合には、「業務起因性」が否定されるため、業務上災害には当たらず、保険給付を受けることもできません。
労災保険法では、保険給付の対象とする通勤災害の「通勤」について、「労働者が就業に関し、住居と就業の場所との間を、合理的な経路及び方法により往復すること」をいうとしています。
そして、往復の経路から逸脱・中断した場合、経路の逸脱・中断をしている間およびその後の往復については、「通勤」から除くとされています。
帰宅途中に居酒屋に立ち寄り、それなりの時間お酒を飲んだというような場合に居酒屋での飲酒中、そして、居酒屋から帰宅するまでの移動中に事故にあっても「通勤災害」とは言えないということになります。
もっとも、夕食の惣菜を購入するとか、医者の診察を受けるなど日常生活に必要な最小限度の行動をする場合には、その用事を終えた後の移動については、通常「通勤」となるとされています。
民事上の損害賠償請求によって請求できる損害項目は、
などになります。
労災により後遺症が残ってしまった場合には、会社に対して、
①後遺症が残ってしまったことについての慰謝料(後遺症慰謝料とも言います)
②後遺症により、労働能力が低下したことによる逸失利益
の補償・賠償を請求することができます。
後遺症の補償は、ご家族を含めた今後の生活の支えとなるものです。
弁護士に相談して、正当な補償を請求することをお薦めします。
労災により、後遺症として認められる例と等級は次の表のとおりです。
<<表はこちら>>
ご自身の後遺症が、何級に相当するかについては、弁護士にご相談ください。
後遺症慰謝料は、後遺症の等級により、次の表の金額が基準になります。
<<表はこちら>>
後遺症が残ってしまった場合には、後遺障害等級に応じて、表の金額の補償を請求することが考えられます。
後遺症による逸失利益の補償・賠償は、以下の計算式により、基準となる金額を計算します。
源泉徴収票等を参考に、労災前の収入を確認します。
労働能力喪失率は、労働能力の低下した程度(%)のことです。
労働能力喪失率については、後遺障害の等級に応じた労働能力喪失率を参考に、被害者の職業、年齢、性別、後遺症の部位、程度、事故前後の稼働状況等を総合的に判断します。
例えば、労災により、左手の親指を失ってしまった場合には、第9級12号になりますので、労働能力喪失率は35%が基準になります。
労働能力喪失期間は、症状固定日から原則として67歳までの間です。
症状固定日とは、治療を係属してもこれ以上症状が改善する見込みの無い状態になった日のことをいいます。
症状固定日の時点で、67歳以上の方については、男性・女性の平均的な余命の半分の期間が労働能力喪失期間の基準になります。
具体的な平均余命と労働能力喪失期間については、弁護士にご相談下さい。
逸失利益の請求は、長期間にわたって発生する収入減少を一時金で受け取るため、将来の利息分を差し引き計算することになります。
この差し引く将来分の利息を、中間利息の控除といいます。
逸失利益として請求できる金額は、将来もらえるはずの金額から、それまでの利息分を控除した金額ということになります。
具体的な中間利息の控除の計算は、労働能力喪失期間によって異なりますので、弁護士にご相談ください。
後遺症による逸失利益の補償を請求する場合には、逸失利益の請求額から、すでに労災保険給付を受けた一部は控除されますが、将来の労災保険給付予定分は控除されません(最高裁昭和52年5月27日判決・判例時報857号73頁)。
なお、後遺症による慰謝料からも、逸失利益からも、労働福祉事業に基づく特別支給金は差し引かれません。
労災保険の給付請求もしていて、すでに支給も受けている場合には、労災保険給付と損害賠償とを二重に受け取ることはできません。
ただ、労災保険では、「慰謝料」に相当する給付はないので、慰謝料の支払いを受けようとするには民事上の損害賠償請求によるほかありませんし、休業損害についても、労災保険からは平均賃金の6割が支払われるだけなので(労災福祉事業から2割の特別支給金が支払われますが、これは損害の補填とはみなされません。)、民事上の損害賠償請求によって、不足する4割分を請求することができます。
具体的にどの程度の請求をすることができるかについては、労災保険の支給内容を確認できる資料をお持ちになって、弁護士に相談をするようにしてください。
労災保険は、事業所に雇用される労働者であれば、誰でも保険給付を受けることができます。
パート、アルバイト、契約社員、日雇いといった雇用形態に関わりありませんし、ビザの有効期限が切れてしまっている外国人労働者であっても給付を受けることができます。
会社の経営者、業務執行権を有する取締役、理事、代表社員は、原則として労災保険の給付を受けることはできません。
しかし、会社の役員であっても、工場長や部長など従業員としての身分も併せ持っているいわゆる兼務役員については、労災保険の給付を受けられる場合があります。
通達でも、「法人の取締役、理事、無限責任社員等の地位にある者であっても、法令、定款等の規定に基づいて業務執行権を有すると認められる者以外の者で、事実上、業務執行権を有する取締役、理事、代表社員等の指揮、監督を受けて労働に従事し、その対償として賃金を受けている者は、原則として労働者として扱うこと」とされています(昭和34年1月26日 基発第48号)。
労災保険の申請をするにも、事業主に損害賠償を請求するにも、まず、災害発生状況や職場の労働環境の実態をきちんと把握しておく必要があります。
事故の発生に労働安全衛生法や刑法などの法律違反が指摘できるようなケースであれば、労働基準監督署が調査に入ることになるので、その資料を後日、情報公開請求等によって入手するということも不可能ではありません。
しかし、そのような事情がなければ、自分の力で、現場の写真を撮影したり、事故の目撃者から事情を聴いてその内容を録音しておくなど、証拠の収集・保全に努める必要があります。
長時間労働による疲労の蓄積が事故の発生に影響しているようなケースでは、タイムカード、営業日報などが労働実態を把握する資料として重要になります。機械の欠陥、整備不良によって事故が発生したようなケースでは、機械のカタログ、整備点検記録などが役に立ちます。
どのような資料が必要になるのか判断がつかない場合には、まず、弁護士に相談をしてみてください。
労災事故に関連した証拠を会社側が所持しているが、その提供に協力してくれない、あるいは、責任追及を恐れて、もしかするとその証拠を破棄してしまうかもしれないといった場合には、裁判所に証拠保全の申立てをすることを検討する必要があります。
証拠保全とは、あらかじめ証拠調べをしておかないとその証拠を使用することが困難になる事情があると認められるとき、裁判所が、関係者の尋問や現場の検証、書証の取調べ等を行うという手続です。医療過誤事件でよく使われる証拠収集の手法ですが、労災事件でも活用することができます。
労災保険の請求をしたけれども労働基準監督署に請求を認めてもらえなかったとか、会社に賠償を求めたけれども取り合ってもらえない、さらには、そもそも会社に補償・損害賠償を求めることができる事故と言えるのか自分では判断ができないといった場合には、まず、弁護士に相談してみてください。労働問題に精通した弁護士が相談にあたります。