請求できる損害項目
民事上の損害賠償請求によって請求できる損害項目は、
- 治療費
- 休業損害
- 慰謝料
- 後遺症が残った場合の逸失利益
(事故によって後遺症を負わなければ得られたであろう将来の収入)
などになります。
後遺障害について
1 後遺症に対する補償・賠償
労災により後遺症が残ってしまった場合には、会社に対して、
①後遺症が残ってしまったことについての慰謝料(後遺症慰謝料とも言います)
②後遺症により、労働能力が低下したことによる逸失利益
の補償・賠償を請求することができます。
後遺症の補償は、ご家族を含めた今後の生活の支えとなるものです。
弁護士に相談して、正当な補償を請求することをお薦めします。
2 後遺症の内容と等級
労災により、後遺症として認められる例と等級は次の表のとおりです。
<<表はこちら>>
ご自身の後遺症が、何級に相当するかについては、弁護士にご相談ください。
3 後遺症慰謝料
後遺症慰謝料は、後遺症の等級により、次の表の金額が基準になります。
<<表はこちら>>
後遺症が残ってしまった場合には、後遺障害等級に応じて、表の金額の補償を請求することが考えられます。
4 後遺症による逸失利益の補償・賠償
後遺症による逸失利益の補償・賠償は、以下の計算式により、基準となる金額を計算します。
源泉徴収票等を参考に、労災前の収入を確認します。
労働能力喪失率は、労働能力の低下した程度(%)のことです。
労働能力喪失率については、後遺障害の等級に応じた労働能力喪失率を参考に、被害者の職業、年齢、性別、後遺症の部位、程度、事故前後の稼働状況等を総合的に判断します。
例えば、労災により、左手の親指を失ってしまった場合には、第9級12号になりますので、労働能力喪失率は35%が基準になります。
労働能力喪失期間は、症状固定日から原則として67歳までの間です。
症状固定日とは、治療を係属してもこれ以上症状が改善する見込みの無い状態になった日のことをいいます。
症状固定日の時点で、67歳以上の方については、男性・女性の平均的な余命の半分の期間が労働能力喪失期間の基準になります。
具体的な平均余命と労働能力喪失期間については、弁護士にご相談下さい。
逸失利益の請求は、長期間にわたって発生する収入減少を一時金で受け取るため、将来の利息分を差し引き計算することになります。
この差し引く将来分の利息を、中間利息の控除といいます。
逸失利益として請求できる金額は、将来もらえるはずの金額から、それまでの利息分を控除した金額ということになります。
具体的な中間利息の控除の計算は、労働能力喪失期間によって異なりますので、弁護士にご相談ください。
5 労災保険による給付との関係
後遺症による逸失利益の補償を請求する場合には、逸失利益の請求額から、すでに労災保険給付を受けた一部は控除されますが、将来の労災保険給付予定分は控除されません(最高裁昭和52年5月27日判決・判例時報857号73頁)。
なお、後遺症による慰謝料からも、逸失利益からも、労働福祉事業に基づく特別支給金は差し引かれません。
労災保険との関係
労災保険の給付請求もしていて、すでに支給も受けている場合には、労災保険給付と損害賠償とを二重に受け取ることはできません。
ただ、労災保険では、「慰謝料」に相当する給付はないので、慰謝料の支払いを受けようとするには民事上の損害賠償請求によるほかありませんし、休業損害についても、労災保険からは平均賃金の6割が支払われるだけなので(労災福祉事業から2割の特別支給金が支払われますが、これは損害の補填とはみなされません。)、民事上の損害賠償請求によって、不足する4割分を請求することができます。
具体的にどの程度の請求をすることができるかについては、労災保険の支給内容を確認できる資料をお持ちになって、弁護士に相談をするようにしてください。
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