アスベスト被害の救済に向けて
アスベストについて
アスベスト訴訟
国家賠償について
- 国は、石綿工場の元労働者やその遺族の方々に対し、和解手続によって賠償金を支払う方針を示しています。詳しくはこちらのページをご覧ください。
☎048-862-0355
埼玉過労死問題対策弁護団 事務局
埼玉県さいたま市浦和区岸町7-12-1 東和ビル4階 埼玉総合法律事務所内
TEL048-862-0355
労働者の作業環境や作業内容自体は危険といえない場合であっても、長時間労働、過重労働によって労働者が健康を害してしまうということがあります。
過労死、過労自殺がその典型です(過労死、過労自殺については後述)。
判例では、事業主は労働者が過重労働により心身の健康を損なわないよう注意する義務(=健康配慮義務)を負っているとされていて、例えば、健康診断などを実施して労働者の健康状態を把握した上で、それに応じた業務の軽減など適切な措置を講じていなかった場合には、健康配慮義務に違反しているとして損害賠償責任を負うことになります。
どこまでの配慮をしていれば安全配慮義務を尽くしていることになるのかは事案ごとの判断になり、明確な基準があるわけではありません。
労働安全衛生法が定める労働者の危険または健康障害を防止するための措置を講じていなかったという場合は、労働安全衛生法違反として刑事罰が課されるだけでなく、当然、民事上も安全配慮義務の違反が認定されることになるでしょう。
しかし、労働安全衛生法に抵触していないというだけでは、安全配慮義務を尽くしたことにはなりません。
川義事件は、呉服・宝石等の卸売りを行う会社で宿直勤務中であった従業員が、反物を盗みにきた元従業員に殺害されたという事案です。
会社側は、宿直員に鍵を開けさせるだけの関係がある人物が窃盗目的で会社を訪れ、その後、宿直員に対して殺意を抱いて殺害するなどということは予測することなどできないと主張し、会社には責任はないと争ったのですが、最高裁判所は、事業主には,宿直勤務中に盗賊等が容易に侵入しないように物的設備(例えばのぞき窓)を施す、万一盗賊が侵入した場合はこれが加えるかも知れない危害から逃れることができるような物的施設(例えば防犯ベル)を設ける。あるいは、物的設備の整備が難しければ、宿直員を増員したり、従業員の安全教育を徹底するなどの措置を講じることによって、宿直員の生命・身体等に危険が及ばないように配慮する義務があったとし、会社は、これらの義務を尽くしていなかったと安全配慮義務違反の責任を認めています。
労働災害について事業主に損害賠償を請求しようとする場合、民法の不法行為責任(民法709条、715条、717条など)を理由にすることもできるのですが、不法行為責任は3年という短い期間で消滅時効にかかってしまうため(民法724条)、使用者の安全配慮義務の違反を指摘して、債務不履行を理由とする損害賠償を求めるのが一般的です(債務不履行責任の時効期間は10年になります。民法167条)。
労災の請求権にも時効があり、期間を過ぎると請求できなくなるので注意が必要です。
療養補償給付、休業補償給付、葬祭料、介護補償給付の時効は、2年、障害補償給付、遺族補償給付の時効は5年です。
労働災害について事業主に損害賠償を求めることができるのは、使用者に安全配慮義務の違反があると言える場合です。
「安全配慮義務」とはどのような内容の義務なのでしょうか。
ある裁判例では、この安全配慮義務を、「労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは器具等を使用し又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務」と説明しています(川義事件・最高裁昭和59年4月10日判決)。
労災保険の申請をするにも、事業主に損害賠償を請求するにも、まず、災害発生状況や職場の労働環境の実態をきちんと把握しておく必要があります。
事故の発生に労働安全衛生法や刑法などの法律違反が指摘できるようなケースであれば、労働基準監督署が調査に入ることになるので、その資料を後日、情報公開請求等によって入手するということも不可能ではありません。
しかし、そのような事情がなければ、自分の力で、現場の写真を撮影したり、事故の目撃者から事情を聴いてその内容を録音しておくなど、証拠の収集・保全に努める必要があります。
長時間労働による疲労の蓄積が事故の発生に影響しているようなケースでは、タイムカード、営業日報などが労働実態を把握する資料として重要になります。機械の欠陥、整備不良によって事故が発生したようなケースでは、機械のカタログ、整備点検記録などが役に立ちます。
どのような資料が必要になるのか判断がつかない場合には、まず、弁護士に相談をしてみてください。
労災事故に関連した証拠を会社側が所持しているが、その提供に協力してくれない、あるいは、責任追及を恐れて、もしかするとその証拠を破棄してしまうかもしれないといった場合には、裁判所に証拠保全の申立てをすることを検討する必要があります。
証拠保全とは、あらかじめ証拠調べをしておかないとその証拠を使用することが困難になる事情があると認められるとき、裁判所が、関係者の尋問や現場の検証、書証の取調べ等を行うという手続です。医療過誤事件でよく使われる証拠収集の手法ですが、労災事件でも活用することができます。
労災保険の請求をしたけれども労働基準監督署に請求を認めてもらえなかったとか、会社に賠償を求めたけれども取り合ってもらえない、さらには、そもそも会社に補償・損害賠償を求めることができる事故と言えるのか自分では判断ができないといった場合には、まず、弁護士に相談してみてください。労働問題に精通した弁護士が相談にあたります。